GABBY & LOPEZ

ナチュラル・カラミティー(Natural Calamity)の森俊二さんとTICAの石井マサユキさんによるギターデュオ、ギャビー & ロペス(GABBY & LOPEZ)。
先行12インチで井上薫さんの鮮やかなリミックスと共に、心にしみる楽曲を届けてくれた彼らが待望のセカンド・アルバム『NICKY’S DREAM』をリリースしました。
サーフミュージック・サイドからの注目も高まる中、前作よりもメロディーやグルーヴが強化された美しいギター・チルは、ゆるめのダンスサイドからも高評価デス。
とっても美しい気持ちになれるメロウ & トリッピーな極上ギター・グルーヴにして、至福のオーガニック・ジャム・サウンド。
ココロにカラダに、大きなやすらぎをもたらしてくれるはず。
石井マサユキさんご本人も、自身のブログ(www.mining-for-gold.com)で「自分の作品なのに、全然飽きないです!」と語っているのが納得の充実ぶりです。
ジャケットのアートワークも秀逸。

Lyle Ritz

高木ブーさんのウクレレもナイスですが、ウクレレソロを志す方にはマストバイのニューアルバム『NO FRILLS』です。
スタジオ・ミュージシャン、主にベーシストとして活躍した後、ウクレレで素晴らしいジャズ作品を発表してきたライル・リッツさん(Lyle Ritz)の最新録音。50年代後半にヴァーヴ・レーベルからリリースした作品が高評価を得たものの、90年代初めに惜しまれつつも現役を引退。
そんなライルさん、ハワイで隠遁生活を送っていましたが、本作『NO FRILLS』で見事カムバックを果たしました。タイトルが物語るとおり「気取らない」スタイルはライルさんの真骨頂。
スウィンギーで優しいウクレレの音色とやわらかいベースのみで構成されたシンプル極まりないプレイで、ジャズ / ポップスのスタンダード・ナンバーを極上カヴァー。誰もが一度は耳にしたことのあるアントニオ・カルロス・ジョビンさん(Antonio Carlos Jobim)の名曲「Felicidade(邦題:悲しみよさようなら)」のイントロからホロロンと聴かせてくれます。
ピースフルな楽曲で「こゝろ © 夏目漱石さん」穏やかに。

Kenny Rankin

『Silver Morning』、『Like A Seed』といた名盤を残し、いまなお活動をつづけるベテラン・シンガーソングライター(SSW)/ギタリスト、ケニー・ランキンさん(Kenny Rankin)。そんな彼が、ニューヨークの名門ライヴハウス「The Bottom Line」で90年に行ったライヴ盤『ENCORE COLLECTION』は、SSW好きにはたまらない好盤です。
アン・サリーさん(Ann Sally)もカバーした名曲「Peaceful」などのオリジナルはもちろん、ローラ・ニーロさん(Laura Niro)からザ・ビートルズ(The Beatles)と続くカヴァーメドレーは感涙もの。
ジョアン・ジルベルトさん(Joan Gilberto)からスティビー・ワンダーさん(Stevie Wonder)へと流れる#12に鳥肌し、ザ・ビートルズの#16で再び、涙、涙。
ジャズ・ボサノヴァ・フィーリングなAORを鮮やかなアコギとヴォーカルで披露した極上のアコースティック・ライヴ。
一日の終わり、疲れたココロに「聴くクスリ」です。

Norihide Ogurusu

高橋幸宏さんと細野晴臣さんによるスケッチ・ショウのフロントアクト、デヴィッド・シルビアンさん(元ジャパン)の来日パーティでのライブ、近頃とみに絶好調ぶりが際立つ松尾スズキさん監督作品『恋の門』サントラへの楽曲提供など、各界の偉人のみなさんから既に大評判の小栗栖憲英(おぐるすのりひで)さん、待望の新作デス!
陽気なピアノが快い#3、心が惹かれるたおやかなフォークソング#7、クラシカルな旋律に安らぐ#9、現地ミュージシャンと吹き込んだストックホルム讃歌#10など、ポール・マッカートニーさんからの影響を感じさせるメロディと優しさあふれる柔らかな歌声は、まるで名作映画のよう。
どこか懐かしく、忘れかけていた風景を思い起こさせてくれる大名盤です。
アルバムタイトル『good morning』。
(c) BEAMS RECORDS
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Elizabeth Shepherd

2006年の最後に買ったアルバム。そして、2007年を迎えて最初に聴いたアルバムです(写真)。カナダ・トロント出身の新人ヴォーカリスト兼ピアニストであるエリザベス・シェファードさん(Elizabeth Shepherd)さん率いるジャズトリオの作品です。

各方面で評判いいようです。

いまもっとも影響力のあるDJのひとり、ジャイルス・ピーターソンさん(Gilles Peterson)もヘビィ・プレイしていることからもその実力は折り紙付き。ジャズの正当派路線にはおさまりきれない爆発力を秘めています。

重厚感たっぷりのイントロ『Start To Move』、疾走感あふれるマイルス・デイヴィスさん(Miles Davis)の隙のないカヴァー『Four』、サンバ・ビーツがアツい『Melon』、パパヤ・スキャットが最高に気持ちいい『Price Is Right』。とてもデビューアルバムとは思えないほどの完成度です。

ちなみにシェファードさんの音源は、リリース元のレーベルのサイトで試聴できます(www.dorightmusic.com)。

P.S.

同サイトには彼女のポートレイトも掲載されています。ジャケットの写真とはずいぶんと印象の異なる素顔のシェファードさんがそこにいます。なんだか年齢不詳なところがまたイイんですよね。

Akira Terao

数年前にさかのぼりますが、MUSIC MAGAZINE誌の年末特集は、おなじみ「ベストアルバム2006」です。ロック、J-POP、ハウス、テクノ、ジャズ、ブレイクビーツなどあらゆるジャンルをごった煮にして見せる手法にはちょっと閉口気味ですが、そんな中でもピーター・バラカンさんが「今年もっともうれしかったこと」として、中学生時代に夢中になったU.K.のブルー・アイド・ソウル界の至宝、ジョージィ・フェイムさん(Georgie Fame)のアルバム『フェイム・アット・ラスト』がリイシューされたことというコメントが印象的でした。若かりし頃のバラカンさんが惚れ込むくらいだから、フェイムさんは今はきっとステキなおやじになっているんだろうなぁと勝手に想像をふくらませています。
ひるがえって私の中学生の頃といえば、寺尾聰さんの『ルビーの指輪』(1981年)が日本中を席巻していました。現在のように四方八方から様々な音源を手に入れられる時代ではなかったので、リスナーの指向性が偏っていたともいえるし、ヒット曲に対する過剰な反応ぶりが至極当たり前の状況にあったともいえます。ヒット曲が世相を反映し、社会現象に発展するという構図がフツーであり、TBSのザ・ベストテンで連続1位獲得→レコード大賞受賞→紅白出場という図式がティピカルな時代でありました。
寺尾聰さんというひとは多面体なキャラクターをもったアーティストさんで、おそらく60年代生まれを境に、「音楽人」として認知されているか、あるいは「役者」として認知されているかが分かれるかと思います。ちなみに私は「音楽人」としても、「役者」としても寺尾聰さんが持つ懐(ふところ)の深さに傾倒しています。願わくば、寺尾聰さんのように時代を共有する友人たちに囲まれ、年輪を重ねていきたいと思う次第です。
そんな寺尾聰さんが25年前の大ヒットアルバム『Reflections』を丸々リメークしました。某大手輸入CDショップに足を運んだところ、ジャズのフロアでも『Re- Cool Reflections』の楽曲が流れていました(それがきっかけで今回のアルバムの存在を知ったわけですが…)。25年前はお金がなくて買えませんでしたが、『Re-Cool Reflections』はがっちり手に入れました!

「楽しそうだから、面白そうだから、やる。それが出来る大人になった、ということかな」(c) AKIRA TERAO

Bernard Fort

光、音、物質、文字といった側面は、それぞれ専門家の関心を集める一方で、私たちの日々の生活の中では、あたりまえと考えられがちな些細な出来事として、省みられる機会を失いつつあります。しかし、この「あたりまえ」は、本当にあたりまえなのでしょうか?日々経験している出来事との出会いには、思いがけない驚きがあるかもしれません。

このほんの少しの「思いがけない」驚きがある場所。それは、出来事の成り立ち自体に関わる偶然性とも言えますし、また、その出来事との出会い、つまり経験における偶然性とも言えるでしょう。

(川崎市民ミュージアム「偶然の振れ幅 – 出来事の成り立ちを記述する美術」より引用)

「思いがけない」驚きの一片。そんなフラジャイルな体験を日々の生活に持ち込んでくれる大切なものとして、「フィールドレコーディング」という領域は、私にとって欠かせない存在です。中でも、フランス人アーティスト、Bernard Fortさんの手による『Compositions Ornithologiques』は愛聴盤のひとつです。カナダのケベック州で録音された野鳥の鳴き声は、「この場所にいること」、「まっすぐ立つこと」、「遠くを見ること」といったごくありふれた日常の行為を再認識させてくれます。「詩・ポエトリー」には読むたびに新しい気付きがあるように、Bernard Fortさんのアルバムにおさめられた音源は、聴くたびに自然界との新しい関係性を私たちにもたらしてくれます。

Brigitte Fontaine

キャリア30年を超える女性ヴォーカリストを三人挙げるとすれば(あくまで私見ですが)、ブリジッド・フォンテーヌさん(Brigitte Fontaine)、エミルー・ハリスさん(Emmylou Harris)、エラ・フィッツジェラルドさん(Ella Fitzgerald、故人)といったあたりになるでしょうか。
彼女たちの声・ヴォイスを手繰り寄せてみると、そこには「華麗なる人生」と「傷だらけの人生」が同居しているアンビバレンツな情況が垣間見えてきます。
死(タナトス)は生(エロス)の暗示物であり、異常は正常の、よそ者は共同体の、敗走は勝利の、周縁は中心の、それぞれ本質を反映的に衝いているように、彼女たちは、「うた」という手法を用いながら、「負」や「闇」こそが「生」というストーリーの深部を暗示しているということをすでに達観しているようです。
先月、ブリジッド・フォンテーヌさんの新作『LIBIDO(リビドー)』がリリースされました。リビドーとは、ラテン語で「強い欲望」を意味する言葉ですが、狭義では「性的欲望」という意味でも使われる言葉です。つまりは、精神分析とか超自我とか肉欲とか、そういった領域に関連してくるキーワードなのです。
「生」であれ、「性」であれ、いずれは老いてゆくもの。それにあらがうか、流れにまかせるか、きっとそれは二者択一の事象ではなくて、どちらか一方にチューニングするものでもなく、「正」と「負」が両義牲のものに成り立っているものなのでしょう。
先に挙げた三人は、そういう意味で、ゴージャスでストイック、オプティミストでペシミスト、前衛的で退廃的、そんなところに私は惹かれるのです。

Toshiko Akiyoshi + Monday Michiru

私はずっとこの母娘を見守ってきました。

母。
1956年、単身渡米。渡辺貞夫さん、日野皓正さんとともに日本のジャズ草生期から活躍する現役女性ジャズピアニスト。黄色人種としてアメリカのジャズ界を歩んでいくという自分自身の長い道のりを想像して作曲された名曲「ロング・イエロー・ロード」は彼女の代表作のひとつ。2007年度米ジャズ界最高峰のアメリカ国立芸術基金(NEA)ジャズマスターズ賞を日本人として初受賞。ついに、ジャズ界の頂点に。

娘。
映画『光る女』(監督:相米慎二さん)に秋吉満ちるとしてデビュー。女優として幾多の賞を受賞するも、その後、シンガー・ソング・ライターの道へと転向。ライヴ・パフォーマンスからDJまで、クラブシーンをはじめとした様々な舞台で活動の幅をひろげる。94年リリースの日本発のアルバム『maiden japan』は国境や文化の違いを乗り越え、ヨーロッパ各国で支持される。才色兼備のアーティスト。

母、秋吉敏子さん。娘、Monday満ちるさん。
ふたりの母娘の見事な生きざま。美しくて、壮絶で、きらびやかで、誰よりも多く「自由」について知っているふたり。「アーティストには自由が必要なんだ」© ウッディ・アレンさん(Woody Allen)。
そんなふたりに谷川俊太郎さんが一編の詩を捧げました。三人の共演による楽曲『HOPE / 希望』。
秋吉敏子さんは、2006年12月4日にサントリーホールで渡米50周年、音楽生活60周年を記念したチャリティー・コンサートを夫君ルー・タバキンさん(Lew Tabackin)をフィーチャーしたジャズ・オーケストラの出演で開催しました。このコンサートで、『HOPE / 希望』がMonday満ちるさんの歌で初披露されたはずです(私は残念ながら行けませんでしたが)。
いま、日本語と英語の両ヴァージョンを収録したシングル盤が店頭に並んでいます。こころにしみるメロディと、詩と、歌声と。ますます注目の三人です。

Ralph McTell

ブリティッシュ・フォークの至宝、ラルフ・マクテルさん(Ralph McTell)。日本ではあまり馴染みがないかもしれません。国内での流通量も少なめですが、機会があれば是非一聴していただきたいシンガーソングライターのひとりです。オススメのアルバムは、『not till tomorrow』。全曲を通じて流れる「サビシサ」加減が絶妙です。ひとりでいることの孤独といとおしさが日本人の感性にマッチすると思います。

以下、鈴木惣一郎さんのコメントより。
イギリスのフォーク音楽の中で、いつも、バート・ヤンシュの影に隠れてる。正しい身の隠しかたを知る、稀な人と思う。「見る人間は見られる」という。見ない人間も、その異様さに関心を呼び、見てしまう。ならば、さり気なく見れば、人からさり気なくしか見返されない。その、さりげなさを知る孤高のモノローグ。絶品だ。