Mira Nair

友人のオススメで久しぶりに映画館に足を運びました。

『その名にちなんで』。

異国に来て子供を育てるのに精一杯の親の世代と、アメリカで育ったアメリカ人でありながらも自分のルーツやアイデンティティを模索しなければならない子供たち。

そんな親子がわかりあえなくなったり、分かりあえたり。

「移民がアメリカで苦労しつつも頑張る系ドラマ」といってしまったらちょっと軽率かもしれませんが、シーンのひとつひとつがジーンとくる映画です。

たとえ移民でなくとも、「自分とは?」という問いにぶつかった方であれば、きっと目頭があつくなるはず。

安易なセンチメンタリズムで終わらないところは、原作や脚本、さらには監督によるストーリー・テリングの骨格がしっかりしているからなのでしょう。

処女作『停電の夜に』でピュリッツアー賞を獲得し、華々しく文壇にデビューしたジュンパ・ラヒリさん(Jhumpa Lahiri)による原作。
そして、デビュー作『サラーム・ボンベイ!』でカンヌ映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)に輝いた元女優の実力派監督、ミーラー・ナーイルさん(Mira Nair)。

もうひとり、ニティン・ソーニーさん(Nitin Sawhney)によるサウンドトラックも秀逸です。

アコースティック・ギターのやさしい調べにシタールやサーランギー、サントゥール、バンスリといったインド古典楽器の伸びやかで艶やかな音色が重なったスコアは、ヒーリング・ミュージック的な心地よさを醸し出しています。

インド音楽というと『ムトゥ 踊るマハラジャ』などのシュールでド派手なイメージが強いかもしれませんが、観る者の心にそっと語りかけてくるようなニティン・ソーニーさんの音楽は、どちらかというと瞑想で心のやすらぎを得るヨガの世界観に近いテイストを持っているように感じられます。

あっ、キャスティングもいいですよ。

ていうか、全部いいです。

そして、思いました。

持つべきものは友人だ、と。

Antonio Carlos Jobim

アントニオ・カルロス・ジョビンさん(Antonio Carlos Jobim)。

どうして、こんなに大きくて温かいんだろう、とジョビンさんのサウンドを耳にするたびにいつもため息が出てしまいます。

それは恐らく、ジョビンさんの誠実な生き方、人生の分かれ道が来た時の正しい選び方、そして家族や友人への愛が彼の音楽の中心にあるからだと思います。

未発掘音源、あるいは世界初CD化といったコピーがかまびすしい昨今の音楽業界ですが、ジョビンさんだけはやはり特別です。

モントリオール・ジャズフェスティバルでのライブ。
未発掘音源。

世界20ヶ国以上の国から2,000人以上のミュージシャンが集い、モントリオール市内のあちこちでさまざまなショーが開かれる世界最大級のジャズフェスティバルです。

ここで、ジョビンさんは当時、さまざまな世界の音楽人に出会ったはずです。

あちらこちらで自身の音楽に対する称賛の声を受け、充実したモントリオールでの滞在の様子がジャケットに映し出されたジョビンさんの横顔からも伝わってきます。

ジョビンさんの珠玉の名品が、楽しげな演奏とオーディエンスの温かい反応が、とても心地よい時間をつくりだしてくれるライヴアルバムの好盤です。

収録曲:
ワン・ノート・サンバ、おいしい水、想いあふれて、トゥー・カイツ、ウェイヴ、ボルゼギン、愛の語らい、ガブリエラ、フェリシダーヂ、ジェット機のサンバ、三月の雨、イパネマの娘

Horace Silver

小林径さんによるブルーノート・ミックスをはじめ、クラブジャズ系のコンピでも取り上げられることの多いピアニスト、ホレス・シルバーさん(Horace Silver)の65年作名盤『The Cape Verdean Blues』です。

ピアノの強いバッキングも印象的なタイトル曲M-1や、うねるリズムに勇壮なホーンが冴えるハードバップM-4「NUTVILLE」あたりはいわゆる「踊れるカンジ」のナンバーです。

ジャケットの構図が、以前ご紹介したデューク・ピアソンさん(Duke Pearson)名義の金字塔『the phantom』に似ているのは気のせいでしょうか(笑)。

Minnie Riperton

誰もが一度は耳にしたことがある名曲「Lovin’ You」。

過去にノーマン・コナーズさん(Norman Connors)やジュリア・フォーダムさん(Julia Fordham)などもカヴァーしていますが、日本国内で爆発的に知られるようになったのは1991年に国内のみで発表されたUKレゲエのベテラン歌手ジャネット・ケイさん(Janet Kay)の功績によるところが大きいかもしれません。

これを機に、日本のPOPシンガーもこぞってカヴァーしましたね。
平井堅さん、本田美奈子さん、アン・ルイスさん、MISIAさん等々。

前置きが長くなりましたが、この「Lovin’ You」の御家本元、正真正銘のオリジナルがミニー・リパートンさん(Minnie Riperton)なのです。

いまは天上の人となってしまいましたが、彼女のアンソロジー『Les Fleurs : The Minnie Riperton Anthorogy』は、ソロデビュー前に在籍していた「ロータリー・コネクション」(E.W&Fの元になったグループとも言われています)の時代の曲からスティーヴィー・ワンダーさん(Stevie Wonder)のプロデュースによる「Lovin’ You」(元々は、アルバム『パーフェクト・エンジェル』』に収録されているもの)まで捨て曲なし!

オリジナルならではのプリミティヴな楽曲。

フリーソウル / ヒップホップ世代には俄然おすすめの一枚です!

Gustav Mahler

たまには、いいでしょ?!

クラシックのジャケ買い。

グスタフ・マーラーさん(Gustav Mahler)、交響曲第五番。

レナード・バーンスタインさん(Leonard Bernstein)指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)。

’63年録音の定番ですよね。

第一楽章の「葬送行進曲」は、タイトルから受ける印象とはほど遠い、温和な死のイマージュに毎回、耽溺しています。

Gil Scott-Heron

まだ若かりし頃、クラブで聴いて「この人誰だろう?かっこいいな」と思って、探求していったらこのアルバム『FARE WILL』にたどり着きました。

パーカッションとフルートのシンプルな演奏をバックに詩を朗読。

メッセージ性の強い詞以上に、サウンドの骨太さが好きなんです。

いまさらながらですが、やっぱりオススメ、ギル・スコット=ヘロンさん(Gil Scott-Heron)。

Donny Hathaway

「天才シンガー」ダニー・ハサウェイさん(Donny Hathaway)の記念すべきファースト・アルバム『Everything Is Everything』です。

ダニー・ハサウェイさんといえば、『LIVE!』があまりにも有名ですが、このアルバムも伝説的な大名盤です。

ソウルという、アメリカ黒人社会の核ともなる生活の音を、ひとつにくくってしまうのも無謀かもしれませんが、それでも、ハサウェイさんは、70年代ソウルに確固とした自信を与え、スリリングに展開させた最重要人物です。

マーヴィン・ゲイさん(Marvin Gaye)の『What’s Going On』も、スティーヴィー・ワンダーさん(Stevie Wonder)の『 Talking Book』も、カーティス・メイフィールドさん(Curtis Mayfield)の『Back to the World』も、まだこの世に現れていない時代、『Everything Is Everything』は、まさに、ブラック・コンテンポラリーの根源的作品といえます。

ソウルの未来を切り拓こうとする意欲がみなぎるサウンド。

ポジティヴなリリックスが明るい希望を与えてくれる、聴く度に、毎回ワクワクしてくる作品です。

P.S.
某CDショップのスタッフさんに聞いたこぼれ話しをひとつ。
まだ、若かりし頃のキャロル・キングさん(Carole King)が、「このアーティストさんはいい!」と周囲にさかんに吹聴していたのが、件のダニー・ハサウェイさん。
この遍路のような歩みが実を結び、後の『ライター』や『つづれおり』といった大ヒットを生み出したのだとか。
人生、何があるかわからないですね!

East Berlin

先日、「全国ジャズ喫茶必需品」としてご紹介させていただいたロルフ・キューンさん(Rolf Kuhn)の幻の名作『SOLARIUS』の翌々年に録音された『East Berlin 1966』をもとに、東ヨーロッパにおけるジャズ事情について、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

すでにベルリンの壁が崩壊して20年近い時が経ちますが、この時代に生きた人々、とりわけ東ヨーロッパのミュージシャンにとって、この5年前の1961年につくられた壁は、自分たちの不自由をいまさらながら象徴するものだったにちがいありません。

この時代のヨーロッパのジャズは、冷戦時代であったにもかかわらず、意外にも東西の交流が行われていました。ジャズが虐げられた人々の音楽というイメージが作用したのかもしれませんが、資本主義の盟主アメリカの代表的な文化であったにも関わらず、東ヨーロッパでは寛容であったようです。

たとえば、この冷戦下に国際ジャズ連盟という世界組織がつくられ、その本部はウィーンにありました。ジャズ・ミュージシャンもたくさん訪問し、東西のミュージシャンの交流もさかんに行われていたと聞きます。

むろん、それだけで、共産主義体制の国々で、ジャズが盛んであったとは言えません。ロルフ・キューンさんの弟、ヨアヒム・キューンさん(Joachim Kuhn)の回想によれば、東ドイツで初めての公式なジャズ・クラブがポツダム市でオープンしたのが、この前年の1965年で、それまでミュージシャンは、ダンス音楽などを演奏しながら生きていたといいます。

たくさんのジャズ・ミュージシャンはいましたが、それだけで生活はできなかったのが実情のようです。どうしてもジャズをやりたかったキューン兄弟は、よりジャズが盛んなポーランドやチェコスロバキアに行くしか道はありませんでした。

そういった交流が東ヨーロッパにはあったのです。そして、その交流を通して、ジャズは東ヨーロッパの中で静かに沸騰し、ジャズ・ミュージシャンのレベルの高さを生み出していきました。

「鉄のカーテン」の向こう側、冷たい世界だからこそ、ジャズは人々の音楽の心を燃やしたのだと思います。

このような背景を振り返りながら、ロルフ・キューンさん達の音に耳を傾けると、「静かに沸騰」する高邁な精神性を少なからずたぐりよせることができるのではないかと思います。
(参考:『East Berlin 1966』ライナーノーツ)

The Puppini Sisters

オールド・タイミーな女性ジャズコーラスに、ポップス・カヴァーもレパートリーにした三人組のアルバムをご紹介。

ロンドンから登場した話題のトリオ、プッピーニ・シスターズ(The Puppini
Sisters)の2nd『THE RISE & FALL OF RUBY WOO』。

いったい、どこまで本気で、どこからユーモアなんでしょう?!いずれにしても、見事なハーモニーと華やかなヴィジュアルに拍手です。

ダスティ・スプリングフィールドさん(Dusty Springfield)のお馴染み、M-1の「Spooky」から、ザ・バングルズ(The Bangles)の’80s NO.1ヒット、M-2の「Walk Like An Egyptian」、パ
ティ・ペイジさん(Patti page)の名曲、M-3の「Old Cape Cod」、さらにはビヨンセ(Beyonce)さんの大ヒット、M-9の「Crazy In Love」までを斬新にカヴァー。

アンドリューズ・シスターズ(The Andrews Sisters)などの女性コーラス・グループのエッセンスを次世代に伝える美女三人組です!

Birgit Lystager

デンマークの歌姫、ビアギッテ・ルゥストゥエアさん(Birgit Lystager)の不滅の名盤、『Birgit Lystager』が30余年の時を経てリイシューしましたっ!

歌手とタレント業を兼ねていたというルゥストゥエアさんのアルバムはどれもレアですが、中でも本アルバムは、ほとんどお目にかかれない激レア盤です。

北欧産ボサノヴァ、ソフトロック。
1970年に吹き込まれた奇跡の歌声です。

セルメン風のソフトロックサウンドに、デンマーク語でカヴァーされるM-2「Fool on
the hill」、M-5「Sunny」、M-7「Tristeza」など、幸福感に満ちた全12曲。

優雅なピアノ、ファンキーなエレピ、時にあらわれるゴージャズなホーン隊、リリースされて30年以上経つのに、このみずみずしさ!!

ヴォーカルものファンのマスターピース。
鮮度抜群な本作は、信じ難いほど、夢のようなミラクル盤です!!