Rosas Danst Rosas

いつも気になるヨーロッパの小国・ベルギー。フルーティーながら重量感があって、モルトの持つほのかな甘みが魅力のベルギービール。王室御用達のチョコレート・GODIVA。世界中でいまもなお愛されつづけるオードリー・ヘップバーン。これこそ元祖、ブリュッセルの小便小僧。
ベルギーにまつわるお話しは枚挙にいとまがありませんが、とりわけ注目しているのが、コンテンポラリー・ダンス・カンパニー、「ローザス」。出会いは都内某所の単館系映画館で同カンパニーのドキュメンタリー・フィルム『ローザス・ダンス・ローザス(Rosas danst Rosas)』を観た時から。およそ10年ほど前にさかのぼるでしょうか。数年後にビデオ化(いまは懐かしいVHSです)されたときには即購入。あらためてDVD化された際にももちろん購入。それほどアツくなっていました。
振付師のアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルがどれほどスゴイ人なのか、監督のティエリー・ドゥ・メイがいかにすぐれた映像感覚をもった人物なのか、予習なしの真っ白な状況で観たそのフィルムは、間違いなくワタクシ的映画ランキングのベスト3に入ります(アートドキュメンタリーフィルムとしてはナンバーワンかもしれません)。
ダンサーのうごきは人間の動作の中でも極めてシンプルで日常的な要素から構成されています。横になること、立つこと、座ること、歩くこと。この4つだけです。これに女性の何気ない仕草(ダンサーは全員女性です)、髪をすく手、肩からするりと落ちるTシャツなどが加わり、音楽と共鳴しながら単純なうごきのパターンとして反復されてゆきます。でも飽きさせないんです。カメラのアングル、自然光をまとった女性のやわらかなシルエット、ダンサーの瞬間のうごき、撮影の舞台となった学校建築、ストイックな現代音楽。ダンス・パフォーマンスに対する新しいエクリチュールの誕生といってもさしつかえないでしょう。
建築の本や雑誌を眺めていると、ときどき「ゲニウス・ロキ」という言葉に出会います。意訳すれば「土地を読み解く鍵」「土地に結びついた連想性」「土地が持つ可能性」といったことになるのでしょうが、アートやデザインにもひろく「ゲニウス・ロキ」を見て取ることができると思います。「ローザス」を生み出した土壌であるベルギー、興味津々です。


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