Lucien Herve

かのル・コルビュジエさん(Le Corbusier )から「建築家の魂をもった写真家」と激賞されたリュシアン・エルヴェさん(Lucien Herve)の作品集『BUILDING IMAGES』からの一コマ。
コルビュジエさんの代表作、「ラ・トゥーレットの修道院」のワンカットです。

リュシアン・エルヴェさん。1910年ハンガリー生まれ(本名:Laszlo Elkan)。1929年にパリへ移住。
銀行員やオートクチュールのモデリストとして働いたのち、雑誌の記者兼カメラマンに。
戦前は労働組合や共産党で活発に活動し、戦時中は収容所に送られることにもなりますが、まんまと脱走に成功し、レジスタンスとしてパリへ戻り、解放の日を迎えましたのです。

このような経緯を経て、エルヴェさんの写真家としてのキャリアは戦後に始まることになります。
1949年のある日、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の装飾をマティスさんに依頼したクチュリエ神父さんと出合い、神父さんの勧めでコルビュジエさんが建設中のマルセイユの集合住宅の工事現場を撮影することになりました。
たった1日で650カットを撮影し、その写真を見たコルビュジエさんの目にとまり、そこから二人の「蜜月」コラボレーションが始まったというわけです。

エルヴェさんの写真の特徴は、そのフレーミング。
それまでの建築写真は一般的に、「あおり」という写真の技法によってパースの歪みが補正できる大形カメラと広角レンズで出来るだけ建物の全体を捉えようとします。
一方で、エルヴェさんは、中型カメラでフットワークも軽く、建物の様々な箇所をクローズアップで部分的に抜き取る新しいスタイルを確立しました。

コルビュジエ建築の造形的な美しさを表現するだけでなく、空間全体にいきわたる「ぬくもり」までも伝えるエルヴェさん独特のフレーミングの技は必見です。

P.S.
エルヴェさんは、2007年6月26日永眠されました。『BUILDING IMAGES』を永代にわたり大切にしてゆきたいと思います。


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