このアルバム(1968年9月11日録音)、「できすぎ」です。
ジャケットのアートワークしかり、参加メンバーの構成しかり、もちろん、収録された楽曲も。
本作のリーダーは、デューク・ピアソンさん(p, Duke Pearson)。ピアソンさんのキャリアのなかでも後期の作品にあたる本アルバム『the phantom』は、個人名義のアルバムとしての金字塔であるだけでなく、ジャズ史のなかでも異彩を放っています。
ピアソンさんを指して、「ブルーノートの理性」と勝手に命名しているのですが、フルートやヴァイブ、コンガなどをフィーチャーした異色の編成にもかかわらず、奇をてらうことなく、知性と野生を両立させる腕前はさすがの一言。
なかでも、10分超の大作、タイトル曲の『the phantom』の太くて真っ黒な音にはシビれます。
中低音の効いたベースのリフを聴いていると、「気がつけば、彼岸の彼方」なんていう気分にさせられます。
計算されたいやらしさもなく、余裕しゃくしゃくで、それぞれのメンバーの情熱とエキゾチックな感性を引き出し、ほどよくブレンドさせる力量には敬服します。
ちなみに、初リリースから約35年の時を経て、再発された際のラーナーノーツのなかでも、「このアルバムは、どこを切っても、パーフェクトだ」と評されています(Scott Morrowさん)。
脳ミソがお疲れ気味の方。
『the phantom』は、ピアソンさんでしか配合できない濃度や有効成分を含んだ、効き目の高い処方剤です。
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