私が作品集をコレクションしているアーティストのひとりにロニ・ホーンさん(Roni Horn)という方がいます。写真を中心に、彫刻やドローイングといったさまざまな領域を縦横無尽にかけめぐる女性作家さんです。
同じ少女の顔写真100枚で構成された『You Are the Weather』やプールの更衣室の風景を魚眼レンズで撮りためた『Her, Her, Her And Her』はオススメです。
視線がやわらかい作家さんです。淡い色の万華鏡をのぞいているような感覚といったらよいでしょうか、ホーンさんの作品集を眺めていると、ゆったりと変化する空のヴェールにつつまれたような錯覚にとらわれるのは私だけではないでしょう。
そんなホーンさんの最新作が到着しました。
『Herðubreið(ヘルズブレイズ)』。
ヘルズブレイズとは、アイスランドの山々の女王と称される標高1,682メートルの典型的な卓上山です。
すでに故人となられた同国の愛すべき画家さん、STOVALことステファン・ヨンソンさん(Stefan V. Jonsson)が生涯を通じて描いた火山、ヘルズブレイズが飾られたさまざまな部屋を収めています。
ヨンソンさんのやさしい作風と、ホーンさんのやわらかい眼差しが上手い具合にミックスされています。
軍隊の無い国、アイスランド。
ファミリーネームが無い国、アイスランド。
平和のあり方と、そこに暮らす日々の営みが絵画と写真というメディアを通じてじんわりと伝わってくる良書です。
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