Gordon Matta-Clark

行きたかったなぁ、ゴードン・マッタ-クラークさん(Gordon Matta-Clark)の初めてのフルスケール回顧展『You Are The Measure』(於:ホイットニー美術館)。

マッタ-クラークさん(1943 − 78、享年35歳)がアーティストとしての活動を始めるきっかけは、20代半ばにロバート・スミッソンさん(Robert Smithson)らを含むアース・アートの活動に参加したことだといわれています。
遺棄された建築物をチェーンソーで断裁するダイナミックなプロジェクトは、1970年代、ミニマリズムに続く次の世代に大きな影響を与えました。
マッタ-クラークさんが生きた70年代は、不況の時代でもありました。ニューヨークの町なかは都市計画半ばで打ち捨てられたビルディングであふれる一方、彼が拠点としたSoHoは、活動的で変化に満ち実験的なアート・コミュニティーであったといわれています。
マッタ-クラークさんの建築物の切断・分断という行為は、一見破壊的でありながら、空間の発見、コミュニティー建築としてのビルや空間の再生・再利用といった創造的な行為でもありました。1971年にはアーティストによるアーティストのためのレストランFoodを設立。3年後には閉鎖されてしまいますが、その間、マッタ-クラークさん自身はもちろん、約60人ものアーティスト達が調理から経営に至るまで様々な形で参加したといわれています。
マッタ-クラークさんが分断した建物は、その後取り壊され現存するものがありません。残るのは、その過程を収めたビデオや写真。今回の回顧展にあわせて出版されたカタログは、「さすが、ホイットニー美術館。」とうならせる充実の内容ですが、会場で上映されたマッタ-クラークさんの制作活動を記録したドキュメンタリー・フィルムは、残念ながら一般には流通しておりません。
DVD化を切に希望します。

P.S.
作風はマッタ-クラークさんと異なりますが、フランスの現代美術家、ジャン=ピエール・レイノーさん(Jean-Pierre Raynaud)が23年(!)もの年月をかけてカンペキな美的水準にまでつくりあげた「白い家」(床、壁、天井、ベッドから家具にいたるまで、すべてが15cm四方の白いタイルで構築されています)を自ら破壊する行為をとらえた貴重な映像がDVD化されています。
ケンチクとアート。
複眼的にクリエイティビティの根源を刺激する美しい「記録」です。


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