Yoji Arakawa + Kazunari Hattori

もう二年以上も前に買ったまま、そのまま読まずにいた本『ラブシーンの言葉(四月社)』です。
筆者は、現代詩の代表格のひとり、荒川洋治さん。
吉本隆明さんをして、「この詩人は多分若い現代詩の暗喩の意味をかえた最初の、最大の詩人である」と言わせしめ、さらには、詩集『心理』で萩原朔太郎章を受賞した「通(つう)」にも大衆にも迎え入れられる詩人。
ときに難解な、ときに極めて日常的な、その振れ幅の大きさにとまどいつつも、「荒川ワールド」は、つねに私を魅了して止みません。

さて、冒頭の『ラブシーンの言葉』。なぜ読まずに放置していたか。理由は極めて単純です。
赤面してしまうのです。
決して、スノッブなカフェでは読めないでしょう(ル○アールあたりが意外と相性いいかも??)。
そう、エロ満載(!)なのです。

あとがきの中で、荒川さん自身がこう述べています。
「ふだん静かな人も、性愛の場面では燃える。男であり女であるときの、口もとからもれる言葉は熱く、冷たく、香り高く、めずらしい。そして神秘的。心身をこえ、はるかなものにつながる空気もある。」

帯に示されたこの言葉だけを拾えば、性のいとなみをおおらかに肯定する語り口、清々しい視点を想像しますが、あにはからんや、いざ本文をめくり始めると、そこには、性器の用語とか、擬音語とか、盛り沢山。
ツユダク、アセダクです。

モラヴィアから団鬼六までという間口の広さは、いかにも荒川さんらしい…。が、いかんせん、官能小説やポルノにおける性の表現がなんのフィルターもかけずに飛び出してくる様(さま)を目のあたりにすると、恥ずかしくなってきます。

しかし、私は読み切りました。
振り返ってみれば、むしろ楽しい読書体験として締めくくることができるのではないかと。
というわけで、わたしは、まだ「枯れて」いないです、たぶん。

そして、ますます、荒川さんが好きになりました。

P.S.
『ラブシーンの言葉』の装丁、すてきです。
どこを見てもクレジットが記載されていなかったので、発行元である四月社さんに問い合わせました。で、わかりました。
服部一成さんがその人。

略歴
1964年東京生まれ。1988年東京芸術大学美術学部デザイン科卒、ライトパブリシテイ入社。2001年よりフリーランスのアートディレクター、グラフィックデザイナーとして活動。

主な仕事
キユーピー「キユーピーハーフ」(1997-)「クリーミィクリーミィ」(2006)、アイムス「ユーカヌバ」(2005-)、キリン「淡麗グリーンラベル」(2002-2005)、パルコ「GIFT DAYS」(2003)、ホンダ「MOBILIO」(2001-2002)、JR東日本「トレイング」(1998-2000)、キリンビバレッジ「にごり果実」(2001)、J-PHONE(1997-1999)、オンワード「組曲」(2000-2001)などの広告キャンペーンのアートディレクション。
「流行通信」誌リニューアル(2002-2004)のアートディレクション、ロゴデザイン。
森美術館「ビル・ヴィオラ展」(2006)、東京国立近代美術館「ドイツ写真の現在」展 (2005)、横浜美術館「中平卓馬展」(2003)「JEAN-MARC BUSTAMANTE展」(2002)、川村記念美術館「ハンス・アルプ展」(2005)「アレキサンダー・カルダー展」(2001)などのグラフィックデザイン。
大塚製薬「ポカリスエット・地球ボトル」(2004)「ポカリスエットステビア」(1997、2001)などのパッケージデザイン。
旺文社「プチロワイヤル仏和辞典」(1996、2002)「LEXIS英和辞典」(2003、2005)、ホンマタカシ写真集「きわめてよいふうけい」(2004/リトルモア)「STARS AND STRIPES」(2001/マガジンハウス)、林央子「here and there vol.1-6」(2002-)、荒川洋治「ラブシーンの言葉」「文芸時評という感想」(2005/四月社)などのブックデザイン。
くるり「NIKKI」「ベスト・オブ・くるり」(2005、2006/ビクターエンタテインメント)などのCDジャケットデザイン。
エルメスジャポン渋谷東急本店のウィンドウディスプレイデザイン(2006)。

受賞
東京ADC賞(1999、2000、2001)、東京ADC会員賞(2003、2005)、東京TDC会員賞(2004、2006)、第6回亀倉雄策賞(2004)、原弘賞(2005、2006)、日本グラフィックデザイナー協会新人賞(2000)、ほか。

納得のキャリアです。


投稿日

カテゴリー:

, ,

投稿者:

タグ:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です