Jeb Loy Nichols

ジェブ・ロイ・ニコルズさん(Jeb Loy Nichols)。
優れたシンガー・ソングライターであると同時に、味わい深い作品を残してきた木版画家でもあります。
そして、おそらく「ユルい」という形容詞が市民権を得る前からそれを実践してきた人物でもあります。

ジェブとの出会いは、2002年リリースの『easy now』。鼻声ヴォーカルが文字通りユルいです。でも、そこにわざとらしさなどなく、フツーに発声したらこうなったという極めて自然体のスタイルにはまりました。

で、最新作の『Long Time Traveller』。レゲエです。
彼自身曰く、
「このアルバムはカントリー色の強いものになるはずだった。でも、音を聞いているうちに70年代のレゲエに近い気がしてね。オールドスクールな雰囲気に仕上げることを意識しながら制作したんだ。そもそも、ぼくはレゲエとカントリーとの間に共通性を感じていたんだ。」
なるほど聴いて納得のコメントです。

決して派手さはありませんが、じんわりと染み入る好盤です。

In The Country

相変わらず秀逸なジャケットのアートワークに惹かれて「ルーネ・グラモフォン(rune grammofon)」のアルバムがまた一枚私のコレクションに加わった。
「イン・ザ・カントリー」というピアノトリオの作品がそれである。
アルバムタイトルは”This Was the Pace of My Heartbeat”。
なんとなくそそられるフレーズである。加えて、ジャケットのスリーブに書かれた「リリカル」という言葉に反応して(ちょうどセンチメンタルな気分もあってか)ついつい購入してしまった。
フリージャズのように自由で爆発していないと刺激が足りないのか、このところほとんどピアノトリオを耳にしていなかったし、実際に聞いてみるまでは正直なところあまり期待していなかった。
ところが「イン・ザ・カントリー」は従来のピアノトリオに対するイメージを「美しく」壊してくれた。
これまで「美しい」という形容詞を様々な対象に当てはめてきたけれど、これは「美しい」と呼べる新しい対象の発見である。
限りなく真空に近い空間の中でかすかに揺れる微細な音の波動をピアノという楽器で静かに爆発させているようだ。
それはジャズ、ロック、クラシック、エレクトロニカ、現代音楽といった様々な領域から影響を受け、それを自分のものにすることができた希有な存在のみが作り出せる音だろう。
モッテン・クヴェニルという男が「イン・ザ・カントリー」の中心人物らしいが、今回のアルバムでは11曲中9曲が彼の作曲からなる。
ルーネ・クリストファーシェンのライナーノーツによれば、彼はキース・ジャレットは聴かなかったけれど(笑)、ポール・ブレイやモートン・フェルドマン等をさかんに聴き、影響を受けてきたという。
アルバムの最後に収められている曲はヘンデルの『涙が流れるままに』をベースに彼が編曲したものであるが、この「美しい」アルバムのラストを飾るにふさわしい出来映えだと思う。

Yozo Hamaguchi

「ぶどう」と「さくらんぼ」を生涯描き続けた版画家、浜口陽三さん。

先日ご紹介した山田太一さんのインタビューの中で、「多くの人が前向きのよき断念こそが必要ではないでしょうか。」という言葉が印象に残りますが、それを一流の作家さんとして実践したひとりこそ、浜口陽三さんなのではないでしょうか。

「ぶどう」と「さくらんぼ」。

Lee Friedlander

コンポラ写真の代表格、リー・フリードランダーさん(Lee Friedlander)の作品集『Self Portrait』から。

自身の「影」をセルフポートレートに見立てた写真。

お茶目なのか、真面目なのか、偶然なのか、狙ったのか…。

それにしても、上手すぎる。

ゾクッとくる「影」がページをめくるたびに次々と現れてきます。

気負わないスタイルは、真似しようとしても、フリードランダーさんのオリジナリティあふれる世界の牙城は崩せないでしょう。

一昨年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)でも大回顧展が開かれたとの由。

ぜひとも、日本にも巡回してほしい作家さんです。

ACNE PAPER

いわゆるモード系雑誌とは縁遠い私ですが、これだけは別格です。

スウェーデン発『ACNE PAPER』。

ファッション誌を見ているというよりは、ポートレイトを眺めているような誌面構成は、好感度大です。

1997年にACNEのデザインチームが家族や友人の為に作成した100本のデニムがきっかけで、履き心地の良さ、抜群のシルエット、新しいモード感が瞬く間に口コミで広まり、今ではスウェーデンデニムの代表に。

というわけで、ACNEと聞くと、デニムブランドという印象が強い傾向がありますが、芯の通った雑誌を出してくるあたり、一企業体としての澄んだポリシーが伝わってきて、清々しい気分になります。

モノクロ写真を多用したタブロイド・サイズの『ACNE PAPER』。

まさに、トニック・アンド・クワイエットなオススメ・モード誌です。

Peter Doig

英国生まれのペインターのピーター・ドイグさん(Peter Doig)。

過日行われた、あのサザビーズ(Sotheby’s)で「White Canoe」という作品がなんと、予想額の6倍の5,730,000ポンド(当時のレートで約13億6000万円)で落札され、リヴィング・アーティスト(現在生きている作家)の過去最高額を塗り替えてしまった、なんともたいそうな作家さんなのです。

1959年、スコットランド、エジンバラ生まれ。

94年にターナー賞にノミネートされるなど、現在イギリスを中心に高い人気を誇っている新しい世代の画家さんです。

自然と人間の関わりというトラディショナルなテーマを扱いながらも、しかし非常に幅の広い表現を得意としており、ときに18世紀の風景画家クロード・ロランさん(Claude Lorrain)を想起させるペインティングを描くかと思えば、またあるときは新聞の切り抜き写真やポストカード、映画からのワンシーンなどを引用しながらミクスチャーなスタイルを用いたりと、多彩ぶりを発揮しています。

白による「抜き」が彼らしい。

まだら、しみ、反発、ちらちらする汚れのレイヤーのオプティカルな効果が、深くて目の前の景色になる…。

うわさには聞いてましたが、実際に画集を眺めてみると、その感覚がよくわかります。

サザビーズで落札はできませんが、この画集『WORKS ON PAPER』なら手が届きます。

しかし、本物を観たいなぁ…。

13億6000万円。

Nils Dardel

D&DEPARTMENT(ケンメイさんの主宰するデザインプロジェクトの一環です)発。
このフォトフレーム、いいです。

とても気に入ってます。

小学校の机(懐かしいですね)のリサイクル。

いろんな生徒さんがこの机で勉強したんでしょう。

ところどころにキズがあったり、ひびが入っていたり。

でも、それがいいんです。

手にしたときから愛着が湧いてきます。

とてもいい買い物をさせていただきました。

ありがとう、D&DEPARTMENTさん。

今回、フォトフレームに収めさせていただいたのは、タブロイド誌ほどの大きさの雑誌『ACNE PAPER』からの切り抜き。
後期印象派のスウェーデン人画家、ニルス・ダーデルさん(Nils Dardel)のセルフポートレイトです。
時代を経ても、決して失われることのない両者の瑞々しさに、ココロも潤います。

Gustav Mahler

たまには、いいでしょ?!

クラシックのジャケ買い。

グスタフ・マーラーさん(Gustav Mahler)、交響曲第五番。

レナード・バーンスタインさん(Leonard Bernstein)指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)。

’63年録音の定番ですよね。

第一楽章の「葬送行進曲」は、タイトルから受ける印象とはほど遠い、温和な死のイマージュに毎回、耽溺しています。

Louis Vega

『パーカッション・マッドネス』
ニューヨリカン・ソウルで有名なNo.1プロデューサー、ルイ・ヴェガさん(Louis Vega)のプロジェクト。

エレメンツ・オブ・ライフ・バンドのパーカッショニスト、ルイシート・キンテーロさん(Luisito Quintero)をフィーチャーしたラテン・クラブ・アルバムです。

本格的なラテン曲あり、アフリカっぽいのもあり、女性ヴォーカル、アナーネさんの艶っぽくお洒落でグルーヴィーなラテンボッサ風ハウス曲あり、生演奏4つ打ちラテンジャズ・ハウスでは、後半にかけてどんどん盛り上がっていきます。

この上昇感&躍動感はたまらなくカッコイイ!

また今回の主役ルイシート・キンテーロさんの力強いパーカッションにも心をうたれました。
プロデューサー、ルイ・ヴェガさんの今作のサウンドは、巷の打ち込み混じりのお洒落ハウスでは到底かないません。
これこそ魂のこもった本当に素晴らしい音楽、躍動感!

ルイ・ヴェガさんの前作エレメンツ・オブ・ライフや、ニューヨリカン・ソウルをお持ちの方は当然のことクラブ、ダンス、Latin系に興味をお持ちの方々!

かなりのオススメ作品!

末永く愛聴盤決定です!

Marisa Monte

ボサノバ以降のブラジル音楽。意外と耳にされていない方も多いのではないかと思います。かくいう私もそうでした。

MPB(Musica Popular Brasileiraの略、ブラジリアン・ポピュラー・ミュージックの意)の代表格、カエターノ・ヴェローゾさん(Caetano Veloso)やジルベルト・ジルさん(Gilberto Gil)といったところはおさえていたのですが、フィメール・ヴォーカルとなると何処から手をつけていいのやら、と考えあぐねていたところに、あらゆる方面に造詣の深い友人から救いの手が差し伸べられました。

半年ほど前に来日公演も果たしたマリーザ・モンチさん(Marisa Monte)がそのひと。件(くだん)の友人から、いくつかオススメのアルバムを紹介されたのですが、スイマセン、「ジャケ買い」してしまいました(笑)。

女性が手にしたらドン引きしてしまいそうなインパクトたっぷりのアートワーク。かなり私見がはいりますが、こういうテイスト大好きです!

肝心の中身。スタジオ・テイクが7曲、ライヴ・テイクが11曲、むちゃくちゃカッコいいです。中でも、M-11のジョージ・ハリスンさん(George Harrison)の極上カヴァー(Give Me Love)は必聴モノ。

中ジャケには収録曲のギターコード付き、そこにあいかわらずのドン引きモードのアートワークが加われば、もはや、天下とったり。

と、まぁ強力プッシュなノリで書いてきましたが、とても心地よい気分にさせてくれるアルバムです。アコースティックで、自由で、ちょっぴりスウィート・アンド・ビターなモンチさんの歌声は歓びに満ちあふれています。

ギターをボロンと弾きながら、あまくてやわらかいポルトガル語で、こっそり歌いたくなります。