Loser

ある人から『プロ論。』という本をいただいた。本の扉を開けるまでもなく、「きっといろんな人の成功哲学が披瀝されているんだろうな」と察しがついていたけれども、開けてみてその通りだったのでひとり苦笑してしまった。
心に病をかかえる私にとってこの手の啓蒙書は苦痛以外のなにものでもない。
それでもせっかくいただいた本。予防線を張りながら読んでみることにした。
目次に目を通したところ、ふたつの章が目にとまった。
ひとつは「会社を辞めるべきか迷ったとき」。
もうひとつは「働くことがイヤになったとき」。
ここから読み始めよう。
しかし、残念ながら心に閃光が届くがごとく鋭い洞察はなかなか見当たらない。
あらゆるジャンルからその第一線で活躍する人の成功哲学が書かれているが、大雑把に各論を括れば、「思いっきり楽しめ!死ぬ気で頑張れ!」ということらしい。
そんなこと、今の自分には絶対無理!と思いながら、それでもなんとか読み進んでいくと、あるひとりの哲学者のインタビューに辿り着いた。

「私が不健全だと思うのは、マイナーな部分をすべて消し、表面的にはポジティブな価値観に従っている社会です。
(中略)社会や人生はそもそも理不尽なんです。
不平等で、不公平で、偶然が評価や成功を左右する。
ところがそうした理不尽を押し隠し、画一的に「努力すれば報われる」とか「大企業に入れば沈没しない」とか、そういう幻想をつくりだそうとしていた。
実はみんな、言わないだけで知っているんです。
それが幻想であることを。
能力があるのに評価されなかったり、企業のために才能を殺した人が数多くいた事実を。
私はそうした理不尽を認め、さらにうらんだり、ねたんだりする人間らしさも、きちんと受け入れるべきだと思っています。」

「失敗経験は、人生の免疫となるのです。
失敗したときは、ごまかしたり、なぐさめたりせず、徹底的に失敗を味わい尽くしてください。
どう悪かったのか、何が問題だったのか徹底して自問する。
そんなふうに悶々と苦しみ続ければ、自分の弱点が分かります。
いかにどうしようもない人間かが分かります。
その弱点に気付いたら、今度はそれを伸ばすことです。
弱点は裏を返せばあなたの最大の長所なんです。
過酷かもしれませんが、自らを見つめることが才能を伸ばす一番のヒントなのです。」

中島義道

巷でいう一流企業を辞めて、(失敗して)今の状況に甘んじている私自身のための備忘録として、中島さんの言葉を上記に書き留めておく。


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