Leo Lionni

ちょっと かわった のねずみの はなし

うしが ぶらぶら あるいてる。うまが ぱかぱか はしってる。

そんな まきばに そって、ふるい いしがきが あった。

なやにも サイロにも ほどちかい、その いしがきの なか、

おしゃべり のねずみの いえ。

けれど おひゃくしょうさんが ひっこして しまったので、

なやは かたむき、サイロは からっぽ。そのうえ、ふゆは ちかい。

ちいさな のねずみたちは、とうもろこしと

きのみと こむぎと わらを あつめはじめた。

みんな、ひるも よるも はたらいた。

ただ フレデリックだけは べつ。

「フレデリック、どうして きみは はたらかないの?」みんなは きいた。

「こう みえたって、はたらいてるよ。」と フレデリック。

「さむくて くらい ふゆの ひの ために、

ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ。」

そして また、フレデリックが すわりこんで、まきばを じっと みつめて いると、

みんなは きいた。「こんどは なに してるんだい、フレデリック?」

フレデリックは あっさり こたえた。

「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね。」

また あるひ、フレデリックは、はんぶん ねむってる みたいだった。

「ゆめでも みてるのかい、フレデリック。」

みんなは すこし はらを たてて たずねた。

「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。

ふゆは ながいから、はなしの たねも つきて しまうもの。」

『フレデリック』
さく レオ・レオニさん(Leo Lionni)、やく たにかわしゅんたろうさん

いい おはなし ですよ。
きょうみの あるかたは ぜひ つづきを えほんで。

P.S.
谷川俊太郎さんのはしがき。

「翻訳にあたっては、原本のもつ視覚的な美しさを損なわぬことを、まず第一に心がけました。
文章のレイアウトを、できるだけ原本どおりにするために、その内容の一部を省略せざるを得ない場合もありましたが、これは俳句的な凝縮された表現を好む日本人には、かえってふさわしいと考えています。」

言葉の世界だけではない、視覚のポエジーにも目端の利いた谷川俊太郎さんは、やっぱり超一線級です。


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