Al Taylor

極めて多元的で雑多なコンテンポラリー・アートの潮流。

もはや、「芸術」を「具象」と「抽象」といった具合に、分類化(二分化)することは無意味なことかもしれません。

それでもなお、制作の現場で具象に反発した傾向をもった作品、あるい反対に、フランシス・ベーコンさん(Francis Bacon)に代表されるように、抽象に反発しつづけた作家さんもいるわけで、「芸術」の根源には、現状に対する不満あるいは疑問といったものがあるのではないかと思います。

そのような意味で、サイ・トゥオンブリーさん(Cy Twombly)は、ゲージュツ然とした「ペインティング」を、あたかも先祖返りのごとく「ドローイング」に対してあらためて人々の眼を向けさせたという点で、大きな功績を残した作家さんといえるでしょう。

一見、落書きのような作品群ですが、近寄ってみると「ここまで!」と驚くほど緻密な描写がなされています。恐らく、通常のオフセット印刷では再現できないほどの「線」のポイエティーク。

そんなサイ・トゥオンブリーさんと同時代に生きた、もうひとりの「ドローイング」作家さんがいます。

アル・テイラーさん(Al Taylor)がそのひと。夭折の画家。

彫刻のフィールドでも作品を残した方ですが、「面」あるいは「ボリューム」で構成された立体ではなく、あくまで、「線」をエレメントとした彫刻です。

サイ・トゥオンブリーさんの作品は、ときとして挑発的でとげとげしくもありますが、アル・テイラーさんのそれは、やさしい詩のような、穏やかで瞑想的アプローチが光ります。

「ドローイング」と「彫刻」がバランスよく配置された作品集、『Drawings / Zeichnungen』がオススメ。

ちなみに、同作品集の出版社が Hatje Cantz であることも、アル・テイラーさんの作品が鉄板であることを奇しくも証明したかたちとなっています。


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