Olaf Otto Becker

休日に写真集をいろいろと見て廻りました。

気のせいかもしれませんが、「白い風景」の写真集が目につきました。

鈴木理策さんの『熊野、雪、桜』。
鈴木さんの故郷である熊野を題材にした作品集です。純白の雪景色の中に木々がわずかにのぞいています。
まるで自分が雪山の小径を歩いているような錯覚。
手前の大きくぼけた花のすき間にくっきりと桜の遠景が見える、独特のディテールと没入感に、鈴木さん独自の視点が垣間見えます。

もうひとつは、石川直樹さんの『POLAR(ポーラー)』。
2006年に三木淳賞、さがみはら写真新人奨励賞を同時受賞し写真家としての活動が注目される彼が、10年にわたって断続的に旅してきた北極圏。
圧倒的な氷の山脈、最果ての港に営まれる生活、小さな村での動物との暮らし、進む温暖化の現実…。
一般的に抱かれる北極の真っ白な世界のイメージを覆す、ありのままの北極の風景。
そこに住む人々の日々の営みが美しくとらえられています。

そんな中で、私のイチオシは、オラフ・オットー・ベッカーさん(Olaf Otto Becker)の『BROKEN LINE』(Hatje Cantz刊)。
カメラとともに、GPSを携えて、いざ、グリーンランドの地へ。
氷のフィヨルド、破壊された幾何学。
先の日本人写真家の「白」が「軟」とすれば、ベッカーさんのそれは「硬」。
写真の質感そのものが硬質であるだけでなく、氷の大地のなかに、いかに地球の原初というものがかたくなに残されているか、GPSの精緻なデータとともに魂の奥底に冷たく響いてきます。


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