Garry Winogrand

「コンポラ写真」という言葉があります。
端的に言えば、日本において、1970年前後に強まった写真の一傾向といったところでしょうか。

1966年12月、アメリカのジョージ・イーストマンハウスで、「コンテンポラリー・フォトグラファーズ 社会的風景に向かって(Contemporary Photographers, Toward A Social Landscape)」という写真展が開催され、ブルース・デヴィトソンさん(bruce davidson)、リー・フリードランダーさん(lee friedlander)、ゲイリー・ウィノグランドさん(garry winogrand)、デュアン・マイケルスさん(duane michals)などが取り上げられました。

彼らの影響を受けた写真をその写真展の題名から「コンポラ写真」と呼んだと考えられています。
これらの作家さんの影響を受けて、その作風や被写体において「コンポラ写真」として日本でも流行したというわけです。(参考:Wikipedia)

さて、先の元祖コンポラ写真家の中でも、ウィノグランドさんは私のお気に入りです。
代表作である『Public Relations』は1977年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)から初版が出たまましばらくお蔵入りになっていたのですが、2004年にめでたく再版。

それまでは、名前は知っていても見たことのない写真集でした。そんなわけで再版のニュースを聞いた時は小躍りしそうになりました。

で、実際届いてみると(?)期待が大きすぎたのでしょうか?「凄い一枚」というのが無いんですね。どちらかというと「凄い」を期待していたので、第一印象は、少しがっかりしたというのが正直な感想です。

しばらくたってから、あらためて見直してみました。「あぁ、これは深読みするための写真集なんだなぁ」ということに気が付きました。

一言で言えば関係性なんですが、この関係性といっても結構深いところまで読み込もうとすればするほどスルメのように味わえる一冊です。
繰り返し読めるということ、しかもその度ごとに多面的な見方ができる極めてすぐれた写真集であるということがやっと分かってきました。

当時(1960~70年代アメリカ)の人々の生活において、「マスメディア」との関係性なくして日常生活は成り立たないという社会の仕組み・システム。
そういう「マスメディア」と社会における人々のポジションというものをアイロニカルに、ときにユーモラスな視点で写し取ろうとしたのが、『Public Relations』とウィノグランドさんの狙いなんじゃないでしょうか、と思っています。

人間という生き物が、一点に心をうばわれているとき、思わず出てしまう本音の表情。

憎たらしい顔が一瞬ユルんだり、アホ面が俄然やる気を見せたときのスイッチの入り方とか、「人間観察」がお好きな方には、「鉄板」の一冊です。


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